血液バイオフォトセラピー療法とは

(渡井健男先生 2010年4月講演より抜粋)

血液バイオフォトセラピーの歴史と種類

 血液バイオフォトセラピー(血液紫外線照射療法)とは

紫外線を血液に照射して、活性酸素を発生させてその血液を体内に戻す医療です。

日本ではほとんど知られていませんが、歴史は意外に古く、米国では80~100年前から行われています。日本でも注目されつつあるオゾン療法の歴史とさほど変わらないくらい、欧米では良く知られた医療です。むしろオゾンより古くから研究が行われているので、日本で行われていないのが不思議なくらいのポピュラーな統合医療の一つです。

血液バイオフォトセラピーは、世界各国や学会、場面で様々な呼び方をされています。

(UVB、UVI、UVBI(ウルトラバイオレット~)、Hemo~、Photo~など)

これは全部同じ方法を指し、名称が統一されていません。一般化しているといえるのはUVB、UVBIですが、
日本でUVBは紫外線B波の名称として定着しており、254nmの紫外線C波を用いるこの治療法と馴染まないため、
ここでは『血液バイオフォトセラピー』という名称を使用しています。

血液バイオフォトセラピーの歴史

紫外線を用いた治療は1880年代にDr.Finsenによって行われており(これにより同氏はノーベル賞を受賞している)、1900年にはガラガラヘビなどの蛇毒の不活性化についての研究がロックフェラー研究所で行われています。この研究を行っていたのが、野口英世博士で、米国ではこの研究による野口英世博士の功績が良く知られています。

ヒトへの応用についての最も古い報告は、1928年の溶連菌による敗血症の女性患者に対して血液バイオフォトセラピーを用いたことが記録されています。この症例では、血液バイオフォトセラピーによって、敗血症が3日間で治癒したと報告されています。

その後、シアトルの科学者であるKnottとDr.Hankockによって、1942年まで6520症例に用いられたが、有害な副作用が無いことが報告されています。この時代、紫外線が盛んに行われていた背景には、良い抗生物質が無かったことが一つの理由であるといえます。紫外線の抗菌作用や解毒作用が、耐性菌を作らない抗生物質の代わりとして用いられていました。

同様にヨーロッパでも抗菌作用などが注目され、今でいう抗生物質のように用いられていましたが、スイスで酸素化した血液に紫外線を照射するHOTが考案され、この方法はドイツで盛んになりました。また、ヨーロッパで盛んに行われているオゾン療法との組み合わせも、今日では行われています。

血液バイオフォトセラピーの種類

血液バイオフォトセラピーには、いくつかの異なる方法があります。UVIと呼ばれる、紫外線を照射した少量の血液を筋肉に注射する方法、最もポピュラーで、血液バイオフォトセラピーの代名詞ともいうべきUVBは、50ccほどの血液を採血し、紫外線照射後に点滴する方法です。

その他、医療用酸素で血液を酸素化した後に紫外線を照射するHOT、オゾン療法と組み合わせたダイナミック・フォトセラピー、ロシアで主に行われている、静脈内にレーザーの端子を留置するLBIなどがあります。

血液バイオフォトセラピーの適応症と生理的作用・体感

血液バイオフォトセラピーの適応症

偏頭痛にはよく効きます。痛みについては、酸化された血液を注入している間に効果が体感できます。報告では赤血球の酸素との結合能があがることによって、静脈血の酸素濃度が30~40%上がり、末梢の酸素濃度が上昇します。そして、その状態が1週間程度続くといわれています。

嫌気性のがんなどにも効果があり、ある施設の報告では、進行性の肺がん250症例に対して血液バイオフォトセラピーが行われ、そのうちの150症例が完全治癒したという報告もあります。

米国ではオゾン療法があまり用いられていないので、血液バイオフォトセラピーとH2O2の組み合わせが、がん治療として多くの代替医療の専門家に用いられています。

また、免疫系の賦活作用があるので、B型肝炎やC型肝炎、アフリカではHIVの治療に用いられています。
気管支喘息などにも有効で、月に30~40回の発作があった患者が、週1回の血液バイオフォトセラピーで、週に1回程度の発作におさまったという症例もあります。

当然のことながら、感染症や敗血症、バクテリアやウイルスに対してももちろん効果的で、抗生物質で3~4日経っても熱が下がらない化膿性の扁桃腺炎の患者では、血液バイオフォトセラピーで1日半で熱が下がった例もあります。こうした症例では、抗生物質を投与しなくても体が楽になるという体感が認められます。

血栓性の静脈炎も、静脈血が酸素化することで、炎症が治まると思われ効果的です。また、昔からよく使われていたのは、蛇毒など生物学的中毒の解毒です。慢性疲労や貧血に対しても、酸素飽和度が上がるので解消します。

血液バイオフォトセラピーの禁忌

・甲状腺機能亢進症

血液バイオフォトセラピーにより、さらに甲状腺ホルモンが刺激されると、急激な低血圧を引き起こしてしまう可能性があります。

・G6PD欠損症

酸化ストレスに弱くなり、特定の薬を服用すると溶血性貧血を起こすことがあります。

・出血傾向の方

血小板減少症、消化管出血性潰瘍、フォン・ウィルブランド病

・重度の光線アレルギー、ポルフィリン症

・妊婦

血液バイオフォトセラピーの生理的な作用

紫外線を照射することによって、様々な種類の毒素を分解します。各種の細菌、ウイルス、真菌を直接的、間接的に不活性化する、抗感染作用があります。

また、免疫機能を活性化します。これには、少量発生するオゾンの効果もあると思われています。

よく言われていることに、赤血球の酸素結合能や運搬能、変形能を改善するので、末梢循環が改善し、いわゆる血液がサラサラになるということが挙げられます。また、一酸化窒素能を産生させるため、血管拡張作用があることも末梢循環の改善に貢献しています。

その他、副腎皮質ホルモンの働きを活性化するので、抗炎症作用が強いことや、がん治療での放射線や化学療法への耐性を強化し、副作用を軽減することも報告されています。

 

血液バイオフォトセラピーの作用機序

全てはわかっていませんが、今現在は紫外線C波を照射することで、血中の酸素分子が励起状態、つまり通常の三重項酸素からSingret Oxygen=一重項酸素になることで、血液中の消去系を刺激し免疫系を賦活化します。一重項酸素は皮膚にとっては、非常に大きなストレスになるが、血液中で発生することで、様々な消去系を動かすのだと思われています。

さらにH2O2を発生させ、細菌、ウイルス、がん細胞を破壊する効果があります。
また、紫外線の直接的作用によって、殺菌、生物学的毒素を分解します。

100年の歴史がある割には、作用機序の主なるものが活性酸素によるものだ、ということがわかったのは最近です。

血液バイオフォトセラピーの体感

日本で血液バイオフォトセラピーを行っているクリニックでの聞き取り調査によると、最も多い体感は、施術を受けている最中に体が軽くなるということでした。背中がつって痛いという患者や腰が痛いという患者など、痛みを訴えている患者は体が軽くなるということを感じるようです。

特に偏頭痛や頭が痛い方には即効性があります。こうした患者は頭がクリアになるという感じを抱くそうです。また、温かくなるという体感も多くある感想です。

血液バイオフォトセラピーの体感は、総じて痛みに対して即効性がありキレがあることが挙げられます。一方で効果の持続力についてはオゾン療法に軍配が上がりますが、オゾンで体感しないような症例に併用すると効果があるといえます。

 

血液バイオフォトセラピーの具体的な方法と機器

実際の血液バイオフォトセラピーの方法

UVI
紫外線照射管のついた専用のシリンジの中に2~5ccの血液を採血し、そのシリンジを紫外線を照射する機器に挿入して酸化し、筋肉に注射する方法です。

UVB
血管から直接引いた血液を紫外線照射機器の中を通し、再び体内に戻す方法で、50~60ccの血液に対し100~120秒間紫外線を照射します。UVIに比べて採血量はかなり多いですが、治療にかかる時間はトータルでも5~7分で、効果的な一方で手軽な方法です。

HOT
点滴ボトルに引いた50cc程度の血液を医療用酸素でばっ気して酸素化し、泡状になった血液に紫外線を照射して体内に戻す方法です。血液バイオフォトセラピーやオゾン療法単独で体感が少ないような症例に用いられている方法です。

ダイナミック・フォトセラピー
オゾンを用いた血液クレンジングを行った血液に紫外線を照射する方法です。HOTと同様に血液バイオフォトセラピーやオゾン療法単独で体感が少ないような症例に用いられている方法です。

血液バイオフォトセラピーの機器

血液バイオフォトセラピーに用いられる機器は、コンパクトでクリニックでもほとんど場所をとらず、持ち運びに便利でボンベなど付属品も必要なく、オゾン療法のように空気中にオゾンが発生することもないので、往診でも利用できる機器です。

血液バイオフォトセラピーの治療頻度と注意事項

血液バイオフォトセラピーの治療頻度

上気道炎や肺炎など急性症状には、1日1回症状が改善するまで1週間くらい毎日施行します。

慢性疾患では週に1~2回で3週くらい続け、次に週1回の施術を4週、その後1~2ヶ月に1回というのが、アメリカでのベーシックな治療法です。

がん治療では8-MOPによって、光の感受性を増しておいて血液バイオフォトセラピーを行うこともあります。この方法では、皮膚のT-cell Lymphomaの治療が行われ、5年生存率を2倍以上に改善していることが報告されています。

血液バイオフォトセラピーを受ける患者への注意事項(米国)

米国では、血液バイオフォトセラピーを受ける患者へ以下の注意事項の説明があります。

施術を受ける当日は、グラスに6~8杯の水を飲んでください、治療の24時間前、24時間後もなるべく水分を取った方が良いとのことです。

活性酸素を生じるため、血液バイオフォトセラピー後2時間は激しい運動は禁忌となるようです。ゆったりした運動は、免疫力を上げるので少しであれば可能です。

大量の抗酸化サプリメントの摂取は効果が落ちるので、その日だけは取らないように、特にβ-カロチンは一重項酸素をスキャベンジするので、やめたほうが良いです。ビタミンC、E、グルタチオン、ピクノジェノール、SODも治療する当日の摂取は不可です。

大量の抗酸化サプリを取りすぎている患者には、酸化ストレスが少なすぎることにもなるので、その日にとる抗酸化サプリを控えることが、酸化療法の効果を上げると考えられています。

一重項酸素のスキャベンジャーとしてはβ-カロチン、ビタミンC、E、B2、尿酸などが知られています。

血液バイオフォトセラピーとオゾン療法における治療計画のフローチャート

血液バイオフォトセラピーと血液クレンジング(大量自家血オゾン療法)における
治療計画のフローチャート

血液クレンジングを行って効果が無い患者は、血液バイオフォトセラピーに変えてみる。それでも体感がない場合は、酸素とフォトセラピーの治療HOTに移行してみる。まだ効果が無い場合は、血液クレンジングとバイオフォトセラピーを併用するダイナミック・フォトセラピーを行うなど、オゾン療法にバイオフォトセラピーが加わることで、治療の選択肢が大きく拡大します。

ただ、体感を大きくすることを目的に、血液クレンジングにフォトセラピーを加えることは、やめた方が良いようです。そうした患者で、一週間体がだるくなるなどの不調が見られたことがあります。回復はしますが、抗酸化力を強力に奪ってしまいますので、体感を良くするためだけに、治療を強くすることは適切ではありません。

体感が少しでもあるのであれば、その量を維持しながらその治療を続けるのが原則です。体感にこだわってしまうと、結果的に患者のプラスにならない場合があります。

血液クレンジングとバイオフォトセラピーの組み合わせは、あくまで体感が見られない場合に限ったほうが良い組み合わせです。

血液バイオフォトセラピーの利点と欠点

血液バイオフォトセラピーの利点

血液バイオフォトセラピーの最も特徴的な利点は、手技が簡単ということです。血液を吸って戻すだけ、5~10分がトータルの治療時間です。また、副作用が少なく、即効性があって患者の体感も早いので、リピーターになりやすい治療と言えます。

オゾンや酸素を使わないので管理が容易であり、機械が小さく場所を取らないので往診ですら使用可能です。
クリニックで他の酸化療法を行っているなら、それと組み合わせることで、バリエーションが豊富になります。

がんを治療するにしても感染症を治療するにしても手詰まりになることが少なくなります。
導入費用が少ないことも、メリットの一つです。

血液バイオフォトセラピーの欠点

欠点としては、日本での認知度が低いことです。他の治療と同様ですが、体感、効果に個人差があります。しかし、これは治療を組み合わせることで調整が可能といえます。

文献にはありませんが、同じ酸化療法の中では、オゾン療法と比較して体感の持続時間が短い感じがします。

(以上)

※『血液バイオフォトセラピー』は、当会が考案した造語であり、商標登録しています。

※本内容を、論文に引用、ホームページで紹介するなど希望される際には、事前に事務局まで御連絡ください。

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患者様向けにやさしい文体で分かりやすく書かれています。
「血液バイオフォトセラピー」に関する書籍として、国内では第1冊目です。

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著者 渡井 健男

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